タイに10年以上住む僕が、タイ生活のリスク・デメリットを10個挙げてみた。

前回は、「タイに10年以上住む僕が、タイの好きなところを10個挙げてみた」というテーマでお届けしましたが、タイでの生活はいいことばかりかと言えば、もちろんそうではありません。
どこに住んでも、いいところもあれば、悪いところもありますよね。

今回は僕が、「タイ生活のリスク・デメリット」と感じていることを10個挙げてみたいと思います。

タイ生活のリスク ①乾季の大気汚染

タイ生活のリスク1つ目は、乾季の大気汚染です。バンコクでは乾季の間(11月〜4月)、PM2.5の濃度が上昇し、ひどい日は空が真っ白に。学校は休校になり、不要な外出は控えるよう警報が発令されます。

世界保健機関(WHO)とタイが独自に定める、健康に被害が及ぶとされるPM2.5の基準値は以下のとおりです。

タイ:50μg/3(AQI=125以下)
世界保健機関(WHO):25μg/m3

乾季は、AQI(Air Quality Index)が200を超える日も珍しくなく、二桁の日は稀。
毎日朝起きると、以下のサイトでAQIをチェックするのが日課になります。

http://aqicn.org/city/bangkok/jp/

バンコクに限らず乾季の間は、タイ全土でPM2.5の濃度が上昇。特に2月下旬以降のタイ北部は最悪です。山間部で焼き畑がはじまり、AQIが500を超える日も。世界ワーストの大気汚染レベルに達し、もはや人が住む環境ではないといっても過言ではありません。
2月下旬から5月頃まではタイ北部への旅行は控えたほうが賢明です。

N95のマスク

PM2.5に敏感な方の中には、外出すると喉が痛くなったり、涙や鼻水が止まらなくなったりする人もいます。花粉症を酷くしたような症状ですが、PM2.5は体内に蓄積され、発ガン性物質であることが厄介なんです。
N95という医療用マスクを着用すれば、PM2.5の侵入を防ぐことができますが、息苦しく、長時間の着用には向いていません。

タイ移住を検討している方は、移住前に乾季の大気汚染を体験しておくことをおすすめします。

タイ生活のリスク ②雨季の洪水や冠水

雨季は雨が降るため大気汚染は収まりますが、今度は洪水や冠水のリスクがあります。
バンコクおよび首都圏は、洪水になることはほぼありません。一方、バンコクのすぐ北に位置するアユタヤ県周辺やチェンマイなどタイ北部、そしてイサーンと呼ばれる東北部は、毎年洪水の被害が発生しています。

バンコクには洪水は来なくとも、冠水は日常茶飯事です。スコールが1時間以上降ると、水はけの悪い道はたちまち冠水します。酷いときは膝上まで達し、帰宅困難な状況に。
自宅周辺が冠水しやすいかどうか、入居前に確認しておくとよいでしょう。

冠水した道路は感電の危険もあります。2011年の大洪水では、感電で100名以上が亡くなっています。水が引くまでは無理に歩かないのが賢明です。

タイ生活のリスク ③慢性的な渋滞

バンコクは世界有数の渋滞都市として悪名を轟かせています。コロナ禍のバンコクは渋滞が解消され、それはそれは快適な日々でした。しかしコロナ禍の終焉とともに、渋滞もカムバック。
都心部は慢性的に渋滞が発生。特に朝夕のラッシュ時の渋滞は凄まじく、電車で1駅分の距離が1時間かかることも珍しくありません。

ラッシュ時には車移動をしないのがベターですが、どうしてもその必要がある場合は、グーグルマップのリアルタイム交通状況を事前に要確認です。

特に空港に向かう際は、ラッシュ時の車移動はかなりリスキー。僕は家からエアポートリンクの駅が近いので、スワンナプーム空港にはいつも電車で向かっています。

数年前の話ですが、夕方にプラカノンからドンムアン空港にタクシーで向かっていたときのことです。ひどい渋滞でタクシーがまったく進まず、結局トンローで下車。そこからドンムアン空港までバイタクで行ったことがあります。
幸いフライトには間に合ったのですが、あんなに長距離をバイタクで移動するのはもうこりごりです。
それ以来、国内線でもできるだけスワンナプーム空港発のフライトを選ぶようにしています。

タイ生活のリスク ④交通事故

タイは毎年2万人前後が交通事故で命を落としています。人口10万人あたりの交通事故死者数ランキングでは、世界181カ国中、タイは38.1人でワースト3位。ちなみに日本は5.2人で、世界ランキング163位です。

世界でも交通事故死率が低く、歩行者最優先の日本からタイに来れば、事故に遭う確率も上がります。
タイでは歩行者よりも車が優先。日本なら歩行者に譲る場面でも、タイでは逆。車は歩行者がいてもお構いなしに突っ込んできます。信号無視も当たり前です。
僕も何度も轢かれそうになっていますが、なんとか無事故でこの12年過ごしています。

特にバイタクやGrabバイクに乗るときは要注意。長距離では利用しないのがベターですし、乗る際はヘルメットを被るようにしましょう。
ちなみにバイタクとGrabバイクなら、断然Grabバイクがおすすめです。その理由は、Grabは保険に加入しているため、事故の際はGrabが医療費を負担してくれるからです。

僕の知人がGrabバイク乗車時に事故に遭い、病院に搬送されましたが、医療費はすべてGrab側が負担してくれたそうです。その話を聞いてから、たとえバイタクが目の前にいてもGrabバイクを利用するようにしています。

タイ生活のリスク ⑤食生活の乱れ

僕はタイに住んでから12年で15kg太りました。65kg→80kgです。
加齢や運動不足のせいもありますが、食生活の乱れも肥満の原因の1つだと感じています。

タイ料理は油っこいものが多いだけでなく、辛いものも多いので、ついつい食事中にコーラを飲んでしまいます。
日本に住んでいたときは、ファストフード以外でコーラを飲むことはほとんどなかったのですが、タイに来てから明らかにコーラの消費量が増えました。
またフルーツも年中食べられるため、ついおやつ代わりに食べてしまうんですよね。

バンコクには日本食レストランもたくさんありますが、ヘルシーなお店は少なく、ラーメンや焼肉、とんかつなど高カロリーなお店ばかり。ラーメンを食べる頻度もタイに来てから明らかに増えました。

バンコクでは外食に不自由しないのははありがたいことですが、ある程度の年齢に達したら、できるだけ自炊することをおすすめします。

タイ生活のリスク ⑥高額な医療費

タイでは医療はビジネスとして確立されています。大手私立病院グループは上場しているところも多く、利益至上主義といっても過言ではありません。
日本人御用達のサミティベート病院やバンコク病院、バムルンラード病院など都心の大手私立病院の医療費は高額で、目ん玉が飛び出るほどの金額を請求されます。

そもそも保険に加入していなければ、診てもらうこともできません。知人はサミティベート病院で盲腸の手術を受け、一千万円近い請求を受けていました。幸い、クレジットカード付帯の海外旅行保険を駆使し、自己負担はなかったそうですが、もし保険がなかったと思うと、ゾッとします。

旅行や移住を問わずタイを訪れる際は、必ず保険に加入して下さい。

タイ生活のリスク ⑦狂犬病

タイは狂犬病発生国です。日本では野良犬や野良猫を見かける機会も少ないですが、タイにはどこにでもいます。毎年、狂犬病で死者が出ており、旅行者も例外ではありません。
数年前には、子猫に引っ掻かれたことが原因で狂犬病で亡くなった白人女性観光客がニュースにもなりました。
僕も犬や猫に噛まれたり、引っ掻かれたりして、何度ワクチンを打ったか分かりません。

バンコクの都心部では野良犬を見かけることは減りましたが、郊外や地方に行けば、その数は驚くほど多いです。
YouTubeでもタイで野良犬に追いかけられたり、囲まれたりしている動画をよく見かけます。

狂犬病は発症すれば治療法はなく、致死率は100%。もし野良犬や猫、リスなどに噛まれたり、引っ掻かれたりした場合は、必ず病院でワクチンを打つようにしてください。

タイ生活のリスク ⑧麻薬、ドラッグ

タイは日本よりも身近に麻薬の存在を感じます。歓楽街を歩いていれば、麻薬の売人が声をかけてくることも日常茶飯事。絶対に麻薬や覚醒剤には手を出さないようにしてください。
大麻は2022年6月に非犯罪化されましたが、2023年5月の選挙後、再び規制の話が出ています。

水商売の女性に促されて覚醒剤やエクスタシーといった麻薬を接種し、翌日警察が踏み込んでくるという美人局もよく聞く話です。
タクシーと警察がグルになり、車に麻薬を仕込まれて、検問で逮捕され、現金を脅し取られるという話もあります。歓楽街で客待ちをしているタクシーはすべからくぼったくりです。歓楽街からタクシーに乗る際は、Grabを呼ぶようにしてください。

タイ生活のリスク ⑨詐欺

詐欺は麻薬以上に日常にあふれています。日本人をターゲットにした「お金見せてくれ詐欺」を筆頭に、「所持金をなくしたのでお金を貸してほしい」などと声をかけられて現金をだまし取られる寸借・送金詐欺、女装した男性に抱きつかれ、身に着けていたネックレスや財布などの貴重品を奪われる「抱きつきスリ」など、枚挙に暇がありません。

在タイ日本国大使館も定期的に注意喚起を発出していますので、タイ渡航前は、在タイ日本国大使館のウェブサイトにある「海外安全情報」に目を通しておくといいでしょう。

在タイ日本国大使館「海外安全情報」
https://www.th.emb-japan.go.jp/itpr_ja/anzen-index.html

タイ生活のリスク ⑩タイ人トラブル

前回の記事、「タイに10年以上住む僕が、タイの好きなところを10個挙げてみた」では、10番目に「タイ人が最高」と書きました。タイ人の多くは穏やかな性格で、争いごとを嫌う人が多い印象ですが、気が短い人が多いのも事実。
特に注意すべきは、タクシー運転手と水商売の従業員です。

タクシー運転手とトラブルになり、銃やナイフで脅される事件も多発しています。数年前には、白人男性がタクシー運転手にナタで頭をかち割られた事件もありました。
ぼったくられて頭にきていても、絶対に手を出してはいけません。金額交渉でできる限りの値下げをしたら、あとはお金を払ってその場を離れましょう。ボッタクリは悔しいですが、命には代えられません。

水商売の従業員も同様です。ぼったくりなどで料金トラブルになり、銃を出されたり、ボコボコにされたりする事件が毎晩のように発生しています。
タクシー同様、できる限りの料金交渉をして、払うもの払ってその場を離れましょう。決して、喧嘩腰で対応してはいけません。根に持たれて、あとから襲撃される恐れもあります。

以上、僕が思うタイ生活のリスクを10個挙げてみました。
詐欺やドラッグ、タイ人トラブルは気をつければ問題ありませんが、大気汚染はタイに住んでいる限り、万人が被害を受けてしまいます。
乾季の大気汚染を理由にタイ移住を断念する人もいるほどです。タイの社会問題にもなっていますが、当面解決することはないでしょう。
PM2.5の健康被害は、すぐに現れるものではなく、数年後、数十年して影響が出るもの。僕も今後、大気汚染とどう付き合っていくべきか、思案しています。

今回挙げたタイ生活のリスクがタイ移住を検討している人の参考になれば幸いです。

筆者紹介

明石直哉

2011年からバンコク在住。2015年に起業し、現在は会社経営と写真家という二足のわらじで活動中です。 このブログではタイ移住を検討している方に向けて、在住10年の経験を活かした情報を発信していきます。
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