タイのリタイアメントビザとは?バンコク在住者が解説する制度の実態と注意点

リタイアメントビザの基本概要
正式名称はノンイミグラントO-A(Long Stay)ビザで、これに加えてノンイミグラントO-Xという上位版もあります。O-Aは1年ごとに更新するタイプで、更新自体には回数制限がなく、条件を満たしている限り何年でも継続できます。O-Xは5年間有効で、1回更新すれば最長10年まで延ばせますが、対象国籍が限られており、資金要件もO-Aより高めです。
対象は50歳以上。資金要件はO-Aの場合、タイの銀行に80万バーツを預金する、月収6.5万バーツを証明する、あるいはその組み合わせで年間80万バーツ相当を満たす、という3パターンがあります。O-Xはこれより厳しく、300万バーツの預金、または180万バーツの預金と年間120万バーツの収入の組み合わせが求められます。
健康保険は2019年から義務化されており、外来4万バーツ・入院40万バーツ以上をカバーするタイの保険会社、またはOIC(タイ保険業監督委員会)認可の海外保険会社の保険が必要です。就労は一切認められていません。
リタイアメントビザのメリット
- 50歳以上であれば、他の長期ビザに比べて取得のハードルが低め
- 更新は国内のイミグレーションオフィスで完結し、DTVのような出入国の手間は基本的にない
- 配偶者や子どもも、別途ノンイミグラントO(帯同家族用)ビザを申請すれば一緒に滞在できる。ただしこれは自動的に付与されるものではなく、結婚証明書や出生証明書などの書類を揃えて個別に申請する必要がある点は覚えておきたいところです
リタイアメントビザの問題点・注意しておきたいポイント
年次更新の負担
更新自体はタイ国内で完結しますが、更新のたびに以下の準備が発生します。
- 銀行残高(80万バーツ)が、更新前2ヵ月・更新後3ヵ月にわたって基準を満たしているかの確認
- 健康保険の継続、または更新
- TM7申請書、証明写真、健康診断書などの書類準備
「年に1回だけ」と言われると軽く聞こえますが、実際には毎年これだけの準備を欠かさず続ける必要があります。何十年もタイに住み続けるつもりなら、この作業自体が生活の一部になると考えておいた方が良さそうです。
正直なところ、ビザを毎年更新するのはかなり面倒です。僕自身はノンイミグラントB(就労ビザ)でタイに滞在していて、これも毎年更新が必要なビザなのですが、更新作業自体は専門のエージェントに依頼しています。それでも、膨大な書類へのサインや、イミグレーションでの長時間の待機は自分でやらなければならず、毎年その時期が近づくと憂鬱になるのが正直な気持ちです。
リタイアメントビザも同様で、エージェントに頼めば書類作成そのものは代行してもらえますが、必要書類をこちらで用意したり、イミグレーションに実際に出向いたりする手間はどうしても残ります。逆に自分で全部やる場合は、エージェント費用というコストは抑えられますが、その分事務作業の負担は自分にのしかかってきます。どちらを選ぶにしても、「毎年何かをしなければならない」という前提から完全に逃れることはできません。
資金要件を割ってしまうリスク
更新が終わった直後にお金を引き出してしまい、期間中に残高が基準を下回った状態が見つかると、次回の更新が認められないことがあります。「一度入金すれば終わり」ではなく、年間を通じて基準額を維持し続けるという意識が必要です。
健康保険コストの上昇
年齢が上がるほど保険料も高くなり、75歳前後を超えると加入自体を断る保険会社も出てきます。リタイアメントビザを長期間維持するつもりなら、この保険コストの上昇は避けて通れない課題になります。
再入国許可証の管理
タイ国内で在留資格を延長した状態で出国する場合、出国前に再入国許可証(リエントリーパーミット)を取得しておかないと、その在留資格自体が失効してしまいます。DTVやEDビザと同じく、一時帰国や旅行のたびに気を配っておく必要がある事務作業です。
90日ごとの住所報告義務
これもDTVやEDビザと共通する義務ですが、リタイアメントビザ保有者にも同様に発生します。
就労は一切不可
資産運用による収益などは扱いが別になるケースもありますが、タイ国内での就労は一切認められていません。
どんな人にリタイアメントビザが向いているか
タイランドプリビレッジとの比較
リタイアメントビザは、年間コストを抑えながら長期滞在できる制度ですが、毎年の残高維持・保険更新・書類準備という事務負担が、生活が続く限りずっとついてきます。エージェントに依頼すれば書類作成の手間は減らせますが、必要書類の準備やイミグレーションへの同行自体は避けられませんし、自分でやる場合はコストを抑えられる分、事務作業の負担がそのまま自分に降りかかってきます。
プリビレッジは初期コストが高い分、こうした年次の「何かをしなければならない」という負担そのものがなく、年齢制限もありません。資金要件や滞在カテゴリーを気にせず、まとまった滞在資格を確保したい人、VIP待遇に価値を感じる人にとっては選びやすい選択肢だと言えるでしょう。
どちらが優れているというより、「年に一度の手続きを自分でこなすことに抵抗がないか」という点が、選ぶ際の実質的な分かれ道になるというのが、周りのケースを見てきた僕の感想です。
まとめ
リタイアメントビザは、資金面では無理のない設計になっている一方、「毎年更新し続ける」という前提を理解しておく必要がある制度です。健康保険のコストが年々上がっていくことも含めて、長期的な視点で検討することをおすすめします。
次回は④観光ビザについて、同じ視点で取り上げていきます。
筆者紹介
明石直哉
2011年からバンコク在住。2015年に起業し、現在は会社経営と写真家という二足のわらじで活動中です。 このブログではタイ移住を検討している方に向けて、在住10年の経験を活かした情報を発信していきます。
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